短期留学は2か月を超えるかで変わる
「2週間の短期留学」「1か月の語学研修」という商品があります。
働きながら行ける長さなので選ばれやすいのですが、やめたくなったときに使える法律は、長いコースとまったく違います。分かれ目は期間で、条文に数字が書いてあります。
分かれ目は「二月を超える」
期間と金額の線を置いているのは特定商取引法41条1項1号で、その数そのものは政令に委ねられています。特定商取引に関する法律施行令24条1項がこれを受けています。
法第四十一条第一項第一号の政令で定める期間は、別表第四の第一欄に掲げる特定継続的役務ごとに同表の第二欄に掲げる期間とする。
語学の教授は三の項にあり、第二欄は「二月」です。金額の五万円と両方を超えたときだけ、特定継続的役務(途中でやめる権利が付く役務)になります。線そのものは2か月と5万円の線にまとめました。
契約の期間二月
二月を超えない
特定継続的役務にならない。概要書面も契約書面も、クーリング・オフも中途解約の上限額も、法律の側からは付かない
二月を超える
五万円も超えていれば特定継続的役務になり、概要書面と契約書面の交付、クーリング・オフ、中途解約の上限額が付く
ちょうど二月は超えていません。「2か月コース」と書かれている商品は、この線の外側に置かれていることになります。
「二月」の数え方は民法にある
では2か月をどう数えるのか。特定商取引法には書かれていないので、民法の期間の規定に戻ります。
まず140条です。
日、週、月又は年によって期間を定めたときは、期間の初日は、算入しない。ただし、その期間が午前零時から始まるときは、この限りでない。
初日を入れません。ただし書きがあり、午前零時から始まるときだけ初日を入れます。
143条1項が、月で定めた期間の数え方です。
週、月又は年によって期間を定めたときは、その期間は、暦に従って計算する。
暦に従うので、30日や31日に置き換えて数えません。2項が満了の日です。
週、月又は年の初めから期間を起算しないときは、その期間は、最後の週、月又は年においてその起算日に応当する日の前日に満了する。ただし、月又は年によって期間を定めた場合において、最後の月に応当する日がないときは、その月の末日に満了する。
4月10日に始まる2か月は、6月10日の前日、つまり6月9日に満了します。6月10日まで続く契約なら、二月を超えています。1日の違いで扱いが変わります。
ただし書きも読みどころです。12月31日に始まる2か月は、2月に31日が無いので月の末日に満了します。申込書の開始日と終了日を、この数え方で当ててから比べます。
通信販売の8日も、役務には付かない
線の外に出たとき、通信販売の返品制度が代わりに使えるのではないかと考えることがあります。特定商取引法15条の3です。
通信販売をする場合の商品又は特定権利の販売条件について広告をした販売業者が当該商品若しくは当該特定権利の売買契約の申込みを受けた場合におけるその申込みをした者又は売買契約を締結した場合におけるその購入者(次項において単に「購入者」という。)は、その売買契約に係る商品の引渡し又は特定権利の移転を受けた日から起算して八日を経過するまでの間は、その売買契約の申込みの撤回又はその売買契約の解除(以下この条において「申込みの撤回等」という。)を行うことができる。
読みどころは対象です。「商品又は特定権利」としか書かれていません。役務、つまりレッスンそのものの提供は入っていません。
だから短期のコースをウェブで申し込んでも、この8日は使えません。特定継続的役務からも外れ、通信販売の返品制度からも外れます。やめるときに使えるのは、契約書に書いてあることだけになります。
残るのは広告の側の規定
外れるのは解除の規定で、広告の規定は残ります。留学の費用は誰に払うかで分けるで扱った11条の表示義務と、12条の誇大広告の禁止は、期間の長さに関係なく通信販売の広告に当たります。
12条は「申込みの撤回又は解除に関する事項」を名指ししています。やめられないコースなのに、やめられるかのように書いてあれば、そこは12条の側で問題になります。短期だからといって、書いてあることを守らなくてよいわけではありません。
つまり短期のコースでは、読む場所が広告から契約書に移ります。法律が用意してくれる分が無いので、書いてある分がすべてになります。
短期を選ぶなら、先に読む3か所
- 開始日と終了日。上の数え方で、二月を超えるかを自分で当てる
- 総額。入学金・教材費を足して五万円を超えるか(語学留学に特定商取引法は当たるかで扱った総額の数え方)
- 契約書の解約の条項。返る割合と、いつまでに申し出るか
1と2の両方を超えていれば、申し込む前に概要書面が渡されます。何が書かれているはずかは概要書面は申し込む前に渡されるにあります。
超えていなければ、3だけが手がかりです。書かれていなければ、返らないという前提で金額を見ることになります。
同じスクールの中に、線の内側のコースと外側のコースが並んでいることがあります。スパルタ英会話は料金ページで最短1か月からのプランを案内していて、契約の期間で受講料が決まる形を取っています。特定商取引法に関する表記のページのほうは、開講日以後の解約手数料を五万円又は未受講分の学費の20%のいずれか低い額としています。同じスクールでも、どのコースを申し込むかで、その記載が当たるかどうかが変わります。
渡航後にやめることになったときの上限額は語学スクールの中途解約と返金の上限にまとめました。
週で期間を決める形の留学では、この二月の線ともう1本、外国に三月以上滞在したときの届出の線が並びます。どの長さがどちらをまたぐかはフィリピン留学は2か月と3か月で扱いが変わるで日数に直しました。
契約でもめたときの相談先は、消費者ホットライン 188 です。
まとめ
- 語学の教授が特定継続的役務になるのは二月を超える契約だけ。ちょうど二月は超えていない
- 二月の数え方は民法140条・143条。初日を入れず、暦に従い、応当日の前日に満了する
- 線の外に出ると、通信販売の8日も使えない。15条の3の対象は商品と特定権利だけ
- 残るのは11条の表示義務と12条の誇大広告の禁止。読む場所が広告から契約書に移る
- 同じスクールでも、コースの長さで当たる規定が変わる