語学留学に特定商取引法は当たるか
語学留学の契約に日本の特定商取引法が当たるかどうかは、契約したときにどこにいたかで変わります。
**渡航してから契約すると、外れる側にいます。**条文にそう書いてあります。
「本邦外に在る者」への提供は、この章ごと外れる
特定商取引法50条は、期間と金額の線を超えた契約、つまり特定継続的役務提供の章について適用除外を並べています。
この章の規定は、次の特定継続的役務提供については、適用しない。
その中の1つがこれです。
本邦外に在る者に対する特定継続的役務提供
「この章」は41条から50条までで、契約の中身をまとめた概要書面も、契約したときに渡される契約書面も、クーリング・オフも中途解約の上限額も、全部そこに入っています。適用しないと書かれているので、まとめて外れます。
つまり現地に着いてから語学学校と契約した場合、契約の相手が日本の事業者であっても、この章の保護は届きません。同じことを別の道から言っているのがセブ島留学はどの国の法律で決まるかで扱った通則法11条6項です。
日本にいるあいだに契約した
- 特商法41条〜50条が当たりうる
- 概要書面と契約書面が交付される
- クーリング・オフと中途解約の上限額が効く
渡航してから契約した
- 50条により、この章が適用されない
- 書面の交付義務も解除の権利も無い
- 準拠法の側でも通則法11条6項の例外に入りやすい
場所が変わると、当たる法律の章そのものが入れ替わる
出発前に契約を終えておくことには、この意味があります。現地で見てから決めたいという判断はありえますが、そのときに何が外れるのかは知っておくことになります。
会社が絡むと、別の号で外れる
50条には他の号もあります。1つ目がこれです。
特定継続的役務提供等契約で、特定継続的役務提供受領者等が営業のために又は営業として締結するものに係る特定継続的役務提供
自分の事業のために契約した場合です。個人事業主が業務のために語学を習う契約は、ここに入る余地があります。
もう1つがこれです。
事業者がその従業者に対して行う特定継続的役務提供
会社が自社の従業員に対して行う場合です。社内の語学研修がこれに当たります。
そこで分かれ目になるのが、誰が契約の当事者になっているかです。会社が費用を出していても、契約書の名義が本人で、本人が事業のためではなく契約したなら、これらの号には当たりません。逆に会社名義で結ばれた契約なら、外れる側に近づきます。
社費留学と自費留学は、費用を誰が出したかの区別として使われますが、条文が見ているのは費用の出どころではなく契約の当事者です。領収書の宛名ではなく、契約書の署名欄を見ることになります。
5万円は総額で見る
もう1つ、線の数え方に運用があります。消費者庁の特定商取引法ガイドは、語学教室を含む7つの役務についてこう書いています。
(※2)入学金、受講料、教材費、関連商品の販売など、契約金の総額が5万円を超えていると対象になります。
受講料だけで数えるのではありません。入学金と教材費と関連商品を足した総額です。
受講料が4万8千円で入学金が1万円という形は、受講料だけを見れば5万円を超えませんが、総額では5万8千円になります。期間が2か月を超えていれば、線の内側に入ります。2か月と5万円の線を確かめるときは、見積書のすべての行を足してから比べます。
オンラインでも同じ
対面のレッスンだけが対象だと思われがちですが、同じページにこう書かれています。
(※3)役務の内容がファックスや電話、インターネット、郵便等を用いて行われる場合も広く含まれます。
オンライン英会話も、期間と金額の線を超えれば特定継続的役務提供になります。渡航前のオンラインレッスンが付いたコースは、そこだけが対象になることがあります。
逆の方向の誤解も書かれています。
上記要件に該当すれば、店頭契約も規制対象となります。
通信販売やクーリング・オフを訪問販売だけのものと考えると外します。店頭で申し込んでも、要件を満たせば同じ規定が当たります。
現地で契約するなら、契約書の解除の条項を読む
50条で外れるのは特商法の章であって、契約そのものが無効になるわけではありません。残るのは契約書に書いてあることです。
だから現地で契約する場合に読む場所が変わります。日本にいるあいだの契約では「法律がこう決めているから、書いていなくても解約できる」が成り立ちますが、外れた契約では書いてあることが上限であり下限になります。
見るのは3か所です。途中でやめたときの返金の割合、その割合が何を基準に決まるか(受講した回数か経過した週数か)、そして返金の申し出をいつまでに出す必要があるか。書かれていなければ、返らないという前提で金額を見ることになります。
現地の学校の規定が英語で書かれている場合、訳を求めるかどうかも先に決めます。署名した書面の言語がどれであっても、署名したのは自分になります。
何をいつやるか
- 出発前に契約するのか、現地で契約するのかを先に決める
- 出発前なら、見積書のすべての行を足して5万円を超えるかを見る
- 期間が2か月を超えるかを、レッスンの開始日と終了日で数える
- 超えていれば、概要書面が申し込む前に渡されるはず
- 現地で契約するなら、上の4つは当たらないという前提で契約書を読む
5つ目が抜けやすいところです。日本の常識で「8日以内なら解約できる」と考えたまま現地で署名すると、その権利が無い契約になります。
まとめ
- 特商法50条により、本邦外に在る者への特定継続的役務提供には41条〜50条が適用されない
- 渡航してから契約すると、書面の交付義務も解除の権利も外れる
- 5万円は受講料だけでなく、入学金・教材費・関連商品を足した総額で見る
- オンラインでの提供も含まれ、店頭契約も対象になる
- 現地で契約する判断はありえるが、何が外れるのかを知ってから決める
契約でもめたときの相談先は、消費者ホットライン 188 です。