英会話の解約は2か月と5万円で決まる
英会話スクールを申し込むとき、「8日以内なら解約できる」と説明されることがあります。
**この説明が当てはまらない契約があります。**あとから解約できるかどうかは、契約の中身で先に決まっていて、申し込む時点で分かります。
線は期間と金額に引かれている
根拠は特定商取引法41条1項1号です。期間と金額の線を超えた契約を特定継続的役務提供と呼び、こう定義しています。ここでいう特定継続的役務は、成果が確実でないとされている役務のことで、語学の教授もその中に入っています。
役務提供事業者が、特定継続的役務をそれぞれの特定継続的役務ごとに政令で定める期間を超える期間にわたり提供することを約し、相手方がこれに応じて政令で定める金額を超える金銭を支払うことを約する契約(以下この章において「特定継続的役務提供契約」という。)を締結して行う特定継続的役務の提供
「政令で定める期間を超える」と「政令で定める金額を超える」が並んでいます。どちらも「超える」なので、ちょうどの数は入りません。
政令は特定商取引に関する法律施行令で、24条にこの2つが置かれています。1項が期間です。
法第四十一条第一項第一号の政令で定める期間は、別表第四の第一欄に掲げる特定継続的役務ごとに同表の第二欄に掲げる期間とする。
2項が金額です。
法第四十一条第一項第一号の政令で定める金額は、五万円とする。
金額は5万円で、全部の業種に共通です。期間だけが業種ごとに別表第四で決まっていて、語学の教授は二月です。
二月を超える期間
どこに書かれているか施行令24条1項 → 別表第四の三の項
五万円を超える金額
どこに書かれているか施行令24条2項
両方を超えたときだけ特定継続的役務になる。片方では足りない
片方だけでは足りません。3か月通うが総額4万円という契約も、1か月の集中コースで20万円という契約も、この定義からは外れます。
線を超えると何が付くか
超えた契約には、書面の交付と解除の権利が付きます。契約の中身をまとめた概要書面が申し込む前に渡され、契約したときに渡される契約書面が8日を数え始める起点になります。そこから8日以内は48条のクーリング・オフが使え、過ぎたあとは49条の中途解約に移ります。契約のどの時点にいるかで、使えるものが変わります。
契約のどの時点にいるかそのとき使えるもの
- 契約する前概要書面の交付41条。契約の中身をまとめた書面を、申し込む前に渡される
- 契約したとき契約書面の交付42条。契約したときに渡される書面で、ここから8日を数え始める
- 書面を受け取ってから8日以内クーリング・オフ48条。理由を書かずに解除できる
- 8日を過ぎたあと中途解約49条。解除はできるが、事業者が請求できる額が政令で決まっている
8日を過ぎても解約はできます。そこが誤解されやすいところで、クーリング・オフの期間が終わることと、やめられなくなることは別です。過ぎたあとにいくら払うことになるかは語学スクールの中途解約と返金の上限にまとめました。
受験対策と学校の補習は、この項に入らない
別表第四の三の項は、語学の教授にただし書きを付けています。
三 語学の教授(学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第一条に規定する学校、同法第百二十四条に規定する専修学校若しくは同法第百三十四条第一項に規定する各種学校の入学者を選抜するための学力試験に備えるため又は同法第一条に規定する学校(大学を除く。)における教育の補習のための学力の教授に該当するものを除く。)
入学試験のための英語と、学校の授業の補習のための英語は、三の項から除かれます。除かれたぶんは四の項(家庭教師)と五の項(学習塾)に行きます。
これは言葉の分類の話ではなく、返ってくる金額が変わる話です。三の項と五の項では、事業者が請求できる上限額が違います。だから「英語を教わるから語学の教授」とは限りません。同じ英語でも、受験のためなら別の項になります。
効果が確実でないことは、法律が先に書いている
41条2項は、特定継続的役務が何かを号ごとの条件で定義しています。その2号がこれです。
役務の性質上、前号に規定する目的が実現するかどうかが確実でないもの
「話せるようになるかどうかが確実でない」ことが、この分野が法律の対象になった理由です。確実に成果が出るサービスなら、途中でやめる権利を法律で用意する必要がありません。
だから広告に「必ず話せるようになります」と書いてあったら、それは景品表示法に触れる前に、その商品が何であるかの説明と食い違っています。条文のほうが先に「確実でない」と言っているからです。
回数券を買う形でも同じ線が引かれる
レッスンを都度受けるのではなく、受講する権利をまとめて買う形があります。これも41条1項2号で拾われています。
販売業者が、特定継続的役務の提供(前号の政令で定める期間を超える期間にわたり提供するものに限る。)を受ける権利を同号の政令で定める金額を超える金銭を受け取つて販売する契約(以下この章において「特定権利販売契約」という。)を締結して行う特定継続的役務の提供を受ける権利の販売
「前号の政令で定める期間」「同号の政令で定める金額」と、1号と同じ数を指しています。売り方が権利の販売でも、線は2か月と5万円のままです。
申し込む前に確かめる順序
契約書を読む前に、次の2つを聞けば判断できます。
- その契約は何か月ぶんか。2か月ちょうどではなく、超えているか
- その契約でいくら払うか。5万円ちょうどではなく、超えているか
どちらも超えていれば、概要書面と契約書面が交付されるはずです。交付されないまま申し込みを求められたら、その時点で41条・42条に反しています。
留学に申し込む場合は、そもそも日本の事業者がレッスンを提供しているのかどうかから分かれます。そこは留学エージェントは誰と契約するかに分けて書きました。
超えていない契約なら、クーリング・オフも中途解約も法律上の権利としては付きません。事業者が任意で返金の規定を置いていることはあるので、そのときは契約書の中に書いてあるかどうかを読むことになります。法律が用意してくれる分は無い、という前提で読みます。
契約でもめたときの相談先は、消費者ホットライン 188 です。最寄りの消費生活センターにつながります。
まとめ
- 語学スクールの契約に解約の権利が付くのは、2か月を超え、かつ5万円を超えるものだけ
- 金額の5万円は全業種共通(施行令24条2項)、期間の二月は語学の教授のもの(別表第四の三の項)
- 8日を過ぎてもやめられる。変わるのは払う額で、それも政令に上限がある
- 受験対策と学校の補習は三の項から除かれ、上限額の違う項に行く
- 「必ず話せる」は、41条2項2号が定義に置いた「確実でない」と食い違う