語学スクールの中途解約と返金の上限
英会話スクールを1年ぶんまとめて申し込んで、3か月で通えなくなったとします。
残りの9か月ぶんは返ってくるのか。返ってくるとしたら、いくら引かれるのか。どちらも条文に書いてあります。手元に要るのは、契約したときに渡される契約書面です。
事業者が請求できる額には上限がある
特定商取引法49条2項は、こう書いています。
役務提供事業者は、前項の規定により特定継続的役務提供契約が解除されたときは、損害賠償額の予定又は違約金の定めがあるときにおいても、次の各号に掲げる場合に応じ当該各号に定める額にこれに対する法定利率による遅延損害金の額を加算した金額を超える額の金銭の支払を特定継続的役務の提供を受ける者に対して請求することができない。
読むべきは「損害賠償額の予定又は違約金の定めがあるときにおいても」の部分です。契約書に違約金の額が書いてあっても、この上限を超えては請求できません。
つまり契約書の違約金の欄を読んで諦める必要はなく、その額が上限を超えていないかを確かめることになります。
開始前と開始後で、上限の決まり方が違う
49条2項は場合を分けています。提供開始後はこうです。
当該特定継続的役務提供契約の解除によつて通常生ずる損害の額として第四十一条第二項の政令で定める役務ごとに政令で定める額
提供開始前はこうです。
契約の締結及び履行のために通常要する費用の額として第四十一条第二項の政令で定める役務ごとに政令で定める額
どちらも「政令で定める額」なので、実額は特定商取引に関する法律施行令の別表第四にあります。ここで出てくる契約残額は、まだ受けていない分の代金のことです。語学の教授(三の項)の第三欄、つまり提供開始後の額はこうです。
五万円又は契約残額の百分の二十に相当する額のいずれか低い額
第四欄、つまり提供開始前の額はこれだけです。
一万五千円
並べるとこうなります。
レッスンが始まる前に解除した
- 上限は一万五千円
- 契約の締結と履行にかかる費用として決まっている額
- 受けたレッスンが無いので、対価の精算は起きない
レッスンが始まったあとに解除した
- 上限は五万円又は契約残額の百分の二十に相当する額のいずれか低い額
- これに加えて、すでに受けたレッスンの対価は払う
- 契約残額はまだ受けていない分の代金
レッスンが始まっているかどうかで、上限の決まり方そのものが変わる
開始後の上限が「五万円又は契約残額の百分の二十に相当する額のいずれか低い額」なので、契約残額が25万円を超えると5万円で頭打ちになります。 20%のほうが5万円に達するのが25万円だからです。
数えてみる
1年ぶん24万円のコースを申し込み、4分の1を受けた時点で解除したとします。
解除の時点で何が確定しているか事業者に払う額
- すでに受けたレッスンの対価6万円24万円の4分の1。すでに提供された分の対価として払う
- 契約残額18万円まだ受けていない4分の3。この20%は3万6千円
- 解除にともなう上限3万6千円5万円と3万6千円の低いほう。契約残額が25万円以下なので20%のほうが低くなる
- 払う合計の上限9万6千円6万円と3万6千円の合計。24万円との差の14万4千円が返る計算になる
この計算は上限の話で、事業者がここまで請求するとは限りません。返ってくる額が上の計算より少ないときに、条文を根拠に聞けるという使い方をします。
入学金や教材費は、この計算の外にあることがある
上の計算はレッスンの対価だけを見ています。入学金・教材費・テキスト代がどう扱われるかは、契約の書き方で変わります。
教材が英会話の解約は2か月と5万円で決まるで触れた関連商品にあたる場合は、別の条文(48条2項)で解除の対象になります。あたらない場合は、その代金がレッスンの対価に含まれているのか、別に払ったものなのかで扱いが分かれます。
だから解除を申し出る前に、契約書面で次を分けて読みます。
- レッスンの対価がいくらか
- 入学金・教材費がいくらで、どちらに入っているか
- すでに受けたレッスンが何回ぶんか
この3つが分かれば、上の計算がそのまま当てられます。
8日を数え始める日は、書面を受け取った日
49条1項は、中途解約ができるのを「第四十二条第二項の書面を受領した日から起算して八日を経過した後」としています。つまり8日の数え始めは、申し込んだ日でも、レッスンが始まった日でもありません。契約書面を受け取った日です。
ここが効いてくるのは、書面が渡されていない場合です。受け取っていなければ起算が始まらないので、申し込みから何か月たっていてもクーリング・オフの期間の中にいます。契約したのに書面が手元に無いなら、まずそこを確かめます。
同じことは、書面が渡されていても記載が足りない場合にも起きます。主務省令が定める事項が書かれていない書面は、法律が求めた書面として足りていません。日付が過ぎているように見えても、先に書面の中身を見ます。
上限を超える請求をされたときは
事業者が上限を超えた額を請求してきた場合、49条2項が「請求することができない」と書いているので、超えた部分は払う義務がありません。
やりとりが噛み合わないときの相談先は、消費者ホットライン 188 です。最寄りの消費生活センターにつながります。契約書面と、支払った額の分かるものを手元に置いてから電話すると話が早くなります。
まとめ
- 契約書に違約金の定めがあっても、49条2項の上限を超えては請求できない
- 語学の教授では、開始前が一万五千円、開始後が五万円又は契約残額の20%の低いほう
- 開始後は、これにすでに受けたレッスンの対価が加わる
- 契約残額が25万円を超えると、20%のほうが5万円を上回るので5万円で頭打ちになる
- 入学金と教材費は別に読む。契約書面で対価と分けて確かめる